「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)」COP16サイドイベントの開催報告
2010年12月4日、低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet事務局:(財)地球環境戦略研究機関)はドイツ連邦環境庁(UBA)及びヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所(WI)の協力のもと、COP16においてサイドイベントを開催した。 当会合では、世界各国からの著名な政策決定者や国際機関の代表および研究者が発表を行い、それに続く討論ではLCS-RNetの活動に参加している研究者らが、其々の研究を踏まえ、先の発表に対するコメントを述べた。発表者およびコメンテーターは、以下のごとくであった。
発表者およびコメンテーター:
Jochen Flasbarth氏(UBA長官)、Christopher Flavin 氏(ワールドウォッチ研究所)、Rae Kwon Chung氏(韓国気候変動大使/国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP))、P. R. Shukla教授(インド経営研究所)、Jim Watson博士(英国エネルギー研究センター(UKERC))、Stephan Thomas博士(ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所)
内容:
(1)低炭素グリーン成長への転換を可能にする戦略、(2)戦略を政策決定者が実施するために必要な研究、(3)政策決定過程に対する研究コミュニティの貢献、(4)政策決定者と研究者の協力、の四つに焦点をあてたこのサイドイベントの発表と論点は、以下のごとくであった。
- 低炭素社会への転換は新興国が鍵を握っている。中国を始めとした国々は五年前には誰も予想しなかった早さで低炭素社会へと舵を切っている。
- 低炭素社会への転換を断片的に行うことはできない。社会構造とエネルギーシステムの統合的な転換が必要である。
- システムにおける転換を図る為には、資源浪費的な政策と投資を阻止するための実物経済におけるインフラの構築とそれを支える動機付けが重要である。
- 気候変動は究極的には将来の成長に限界をもたらすものであるが、必ずしもそれだけが現在の成長におけるボトルネックとなっている訳ではない。水や他の天然資源の不足のほうがより緊急の問題であるという見方もあり、低炭素発展をより広範なグリーン成長アジェンダの中に位置付けて考えることが大事である。
- 低炭素発展に関する研究は長期的な視野を必要とするが、現実の政策枠組みは短期的な意思決定に基づいたものである。そのため、低炭素研究および政策を推し進める為には、従来型の研究者のアプローチでは足りず、さらに政策策定過程と科学的知見との協働を図ることが重要である。
LCS-RNetの概要
経緯
「LCS-RNetは、2008年5月のG8環境大臣会合(神戸:5月24‐26日)において、日本の提案により設立が合意され、それぞれ自国の低炭素社会を実現するための研究において各国を代表する研究機関により、2009年4月に正式に立ち上げられた研究ネットワークです。同月に開催されたG8環境大臣会合においては、LCS-RNetの活動成果を今後のG8環境大臣会合に定期的に報告していくよう、求められました。昨年10月には第1回年次会合がイタリアのボローニャで、今年9月には第2回年次会合がドイツのベルリンにおいて、それぞれ開催されました。
現時点での参加国・機関は、我が国のほか、フランス、イタリア、韓国、イギリス、ドイツ、インドの7カ国からの15研究機関です。
目的
[1] G8や気候変動枠組条約締約国会議などの気候政策の意思決定プロセスへの科学的知見の提供
[2] 低炭素社会研究の推進及び様々な研究に関する情報交換
[3] 政策決定者やNGO、市民らと研究者の対話の推進
連絡先
脇山 尚子 (Takako Wakiyama)
[email protected];