低炭素アジアの実現に向けて – オーナーシップを持ったINDC作成に向けた日本とアジアの協働
■ 日時: 2014年12月8日(月) 10:00-11:30
■ 会場: COP20 日本パビリオン
■ 主催: 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
■ 共催: 京都大学、国立環境研究所(NIES)、みずほ情報総研
各国が自主的に決定する約束草案(Intended Nationally Determined Contributions:INDC)の提出が求められています。日本はアジアの国々において、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)による政策検討や、インベントリ整備、NAMA策定などを進め、また、低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)による域内の研究コミュニティの育成・強化、研究者・政策決定者の政策対話の実施、また、年次会合等による情報交換・知識共有などを通じて、アジアの国々による低炭素社会に向けた取組みを支援してきました。今後これらの知見・経験をINDCに統合していくことが有効に働こうとしています。
今回このサイドイベントは、日本が今までにアジアの国々とどのような協働を行ってきたか、また、アジア発展途上国の視点から、INDC作成に向けて日本から今後どのような支援を期待するのか、自由に意見交換を行う機会といたします。
発表・議事の概要
- 環境省の大井通博氏は、GIO等によるインベントリ構築支援、AIMチームによる低炭素社会シナリ オ開発、アジア太平洋温暖化セミナー等での知識共有など、日本のアジアにおける様々な活動につ いて触れ、日本が科学をベースとしたアジア諸国での緩和政策形成に貢献してきており、今後もこ うした取組みを継続していきたいと述べた。
- NIESの藤野純一氏は、AIMチームが日本の科学的な政策形成に貢献し、アジア諸国においても低 炭素社会シナリオ開発を進めてきたことを紹介した、また、AIMはシュミレーションモデルの名称 であると同時に、20年の蓄積をもつ人的ネットワークでもあり、各国・各地域のシナリオ開発にあ たり、当該国・地域の研究者がオーナーシップをもって開発に携わることを重点とし、アジアの人 材育成に努めてきたと述べた。
- UTMのHoChinSiong氏は、マレーシア・イスカンダールにおけるAIMチームとの協働について 触れ、科学と政策とをつなげるのみならず、実施計画を作って具体的な活動を特定していくことに より、低炭素社会に向けた実装につなげていくことが重要であることを強調した。また、イスカン ダールの経験として、首長による強力なイニシアティブ(トップダウン)と市民への啓発や環境教 育などによる低炭素社会マインドの醸成(ボトムアップ)、また、メディア等によるアウトリーチが 重要と述べた。
- カンボジア環境省のUyKamal氏は、カンボジアが実施している緩和活動に触れ、日本を含む様々 なドナーとの協働が行われているところ、科学をベースとした政策形成の重要性について理解して おり、研究者の能力構築・強化をはかり、研究成果を政策に反映できるような仕組み作りが急務で あると述べた。また、信頼できるGHGインベントリの構築が不可欠であり、この点において今後の 改善が望まれると述べた。
- インドネシア・DNPIのLawinBastianTobing氏は、インドネシアが省庁横断的な調整を進めなが ら、2015年9月にINDCが提出できるよう準備を進めていることを紹介した。また、研究者の政策 立案への関与という点につき、州レベルでの緩和計画策定において、当該地域の大学とのMOU締 結を進めてきていることを述べた。
- ベトナム・DMHCCのNguyenKhacHieu氏は、ベトナムが様々なドナーとの協力により2015年5月にINDCを提出できるよう準備をすすめていること、一方でこうした準備を進めつつも、国内 の人材の育成が急務であると述べた。また、INDCについて今回のCOPにて明確なガイドラインが 出されるべきとの見解を示した。
- Jakkanit Kananurak氏は、TGOがJICAの支援を得て設立した気候変動国際技術・訓練センター(CITC)について説明し、域内の能力構築の重要性にかんがみ、将来このセンターがタイのみなら ずASEANの能力構築・強化に貢献できること、また、このセンターが域内の知識共有ハブやネッ トワークの核となる可能性について述べた。
- モデレーターの西岡秀三氏は、本サイドイベントを総括し、日本がインベントリ構築から低炭素社会シナリオ構築、低炭素社会にむけた実装といった一連のプロセスを支援してきたこと、日本の支 援の特徴として、こうしたプロセスにおいて当該国のオーナーシップを重要視してきたこと、また、 WGIAやAIM国際ワークショップ、低炭素アジア研究ネットワークの諸会合などを通じて、アジア 各国がお互いに学び合い、また、知識共有を進めてきたことを指摘した。一方で、登壇者からは、 能力構築やインベントリ構築など、低炭素発展を支える基礎部分に、日本(先進国)からの支援が いっそう望まれるとの発言があった。
関連ウェブサイト