COP22 EUパビリオン サイドイベント 脱炭素化へ向けた長期戦略 – ナレッジシェアリング・グループの役割

タイトル :  脱炭素化へ向けた長期戦略 – ナレッジ・シェアリング・グループの役割  (EUパビリオン 「長期戦略ワークショップ」のセッション2として開催)img_1861

日時: 2016年11月11日(金) 15:00-16:45

会場:COP22 EUパビリオン Bratislavaルーム

共催: ドイツ連邦環境・自然保護・建造物・原子力安全省(BMUB)、ヴッパタール研究所、LCS-RNet 事務局

セッション概要:

LCS-RNetは、各国内での議論やNDCの国際的な精査が行われることを背景として、途上国と先進国両方の研究者が集い、シナリオ及び脱炭素化と低炭素発展パスの選択肢について検討するセッションを開催しました。

最新の研究報告が各国の研究者から発表され、IPCC第三作業部会共同議長 PR Shukla教授とイタリアCMCCのAntonio Navarra教授が討論を行いました。 

プログラムのダウンロード: cop22-side-event-lcs-rnet_eupv

 

セッションレポート:

はじめに日本国環境省研究調査室の竹本明生室長が開会の挨拶を行い、パリ合意で決められたNDCの強化と実施による世界削減の担保、行動主体である都市や金融機能への働きかけ、途上国ファイナンスと支援実効性を高める能力構築の組み合わせ、脱炭素社会を見通す長期戦略の必要性などがこれまでのLCS-RNet会合で取り上げられてきていることを挙げ、LCS-RNetの先見性について指摘しました。

また、G7富山環境大臣会合で国際的な知見・知恵を終結するネットワークの強化をうたっていることに触れ、LCS-RNetの役割がますます重要となってきていること、日本において長期ビジョン検討会が始まっており、既にドイツ、フランスの知見を学び始めていることなどを紹介しました。

これを受けてドイツ環境省のSilke Karcher氏が、将来の不確実性にうまく対応していくためにシナリオ研究の重要性が益々高くなっていること、こうしたエクササイズの結果を共有していくことが重要だと述べました。

次にIGES研究顧問でLCS-RNet事務局長の西岡秀三博士が、ネットワークの性質(=政策立案に貢献する研究者のネットワーク)及び設立から今までの歴史、現在の運営メンバーについて紹介しました。

続いて、ドイツ ヴッパタール研究所のStefan Lechtenböhmer博士が、ドイツでは低炭素社会への移行に向けたシナリオ研究が1970年代から既に行われており、社会の様々なステークホルダーが独自にシナリオを作成し、社会全体で協議を行ってエネルギーシステムを成功させたこと等を紹介しました。長期目標の議論についても、社会全体で議論し、様々なステークホルダーによる実践を促すためのツールとしてシナリオは不可欠であることを強調しました。

フランスCIREDのChristophe Cassen博士は、モデルの世界内外での情報交換・コミュニケーションの少なさを問題として指摘した上で、誰もが利用しやすい簡便なツールの開発をCIREDが企画していることを紹介しました。このツールは特に政策担当者とモデル側との意思疎通を促進するための物で、モデルとステークホルダーとのギャップを改善し、コミュニケーション活発化のきっかけとしても期待が持てるだろうと述べました。また、ツールの開発の際には異なるプロジェクトの参加者間の交流と協働が重要であると述べました。

続いてIIASA、IEA及びポルトガルからそれぞれの事例の発表がありました。

IIASAのLuis Gomez Echeverri博士は「TWI2050」について紹介しました。TWI2050は、現在使われている長期予測モデルがSDGsの各目標に対して十分に対応できていないことを問題点として認識し、2050年に持続可能な社会への移行を実現するために、2030年の時点で求められるSDGsの達成状況を検討するというバックキャスティングの手法をとっていること等を説明しました。

ポルトガルのPedro Barata博士はポルトガルの低炭素発展ロードマップを紹介しました。低炭素発展は企業にとっても得になるということを産業界に理解してもらうことが必要で、今後3年程度をかけてこうしたプロセスを着実に進めていきたいと述べました。

IEAのLiwayway Adkins博士はEnergy, Climate Change & Environment: 2016 Insightsについて紹介しました。2DSプロジェクトによるシナリオでは、2050年までに電力分野の脱炭素化が進むとしており、CCSとの併用で石炭発電によるGHG排出はほぼなくなり、エネルギー効率での削減効果に加えて、社会の構造変化による排出削減が見込まれるという分析を報告しました。質疑の場では、モデル研究はより現実を反映させるものに進化してきているため、より実現可能性の高いシナリオが導き出されるだろうと述べました。

パネルディスカッションでは、IPCC第3作業部会のP.R. Shukla教授とイタリアCMCCのAntonio Navarra教授が登壇しました。

Shukla教授は、IPCCでの経験を踏まえて、気候変動の現実を理解する段階から、解決策を模索する段階に入ったことで、科学コミュニティーの果たす役割への期待と機会は拡大していること、今後はエネルギーのみならず、土地利用や森林など吸収源の検討が重要になってくること、地域レベル、国レベルというモデリングの実践では、トップダウンとボトムアップの手法がどのように折衷点を見つけるかが近年ひとつの課題になっていること、LCS-RNetが、こうした統合的なアプローチのためのプラットフォームの一つとなっていることなどを述べました。

次いでAntonio Navarra教授はCOPの歴史自体が科学的なアプローチの歴史であること、また学術界は依然として古い体質のままで現代の問題を解決する編成になっていないという考えを述べました。異なる専門分野が協働するための新しいツールの開発や取り組みを進めなくてはならないと強調しました。

質疑応答でNavarra教授は、ファンディングの仕組みを変えることや、分野の近い専門コミュニティ同士から協働を始めること、さらには大学の中に共同プログラムを立ち上げていくことなどを提案し、科学が現実の問題の解決により資するよう、変わっていく必要があると述べました。これを受けてShukla教授は、大学の中での協働は一部では始まっており、国際的にもLCS-RNetやLoCARNetなどを通じて、先進国間、先進国と途上国の研究者間・機関間の協力が進んでいることを指摘し、この取組をさらに進めていくことが重要だと述べました。

 

プログラム:

開会

 

ナレッジ・シェアリング・ネットワークとしてのLCS-RNet

 

長期戦略: ナレッジ・シェアリング・ネットワークとNDCs

Ambitious national energy scenarios and NDCs — the role of a science-policy-society discussion: Examples from Germany

Informing public discourse through decarbonisation scenarios — A template and knowledge sharing network approach

 

脱炭素化に向けた長期戦略 – 3つのアプローチ

“2050年の世界” プロジェクト

パネルディスカッション – ナレッジ・シェアリング・ネットワークとシナリオの役割と前進

まとめ

閉会

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