COP21 サイドイベント: COP21とその後の気候交渉における積極的な炭素価格付けとパラダイムシフト

日時: 2015年12月5日、11:00-13:00France Pavilion_20151203

場所: COP21 フランスパビリオン

発表者:

西岡秀三 IGES研究顧問/LCS-RNet事務局長

Jean-Charles Hourcade  フランス環境・開発国際研究所(CIRED)

P.R. Shukla  IPCC第3作業部会共同議長

Jim Skea  IPCC第3作業部会共同議長

Teresa Ribera IDDRI

Everton Lucero ブラジル環境省

 

COP21フランスパビリオンでのサイドイベント「COP21とその後の気候交渉における積極的な炭素価格付けとパラダイムシフト」において、LCS-RNet声明の発表が行われた。

このサイドイベントには気候変動問題の学識者、国際金融機関の専門家、企業、政府関係者が参加した。第1セッションでは声明の発表とカンクンパラダイムシフトの政治的、及び経済的な論理的根拠についての議論が行われた。

第2セッションでは、二酸化炭素排出抑制における社会的、経済的な価値(積極的な炭素価格付け)をベースとした、COP22(マラケシュ)までに南北双方の国々のより包括的な成長を可能にすることが期待できるファイナンス・メカニズムの実施に関する革新的イニシアチブの条件と可能性についての考察が行われた。

第1セッションのレポートを以下に掲載する。

 

西岡秀三IGES研究顧問/LCS-RNet事務局長は、LCS-RNet声明「COP21: 気候と持続可能性の正念場 (COP21: A moment of truth for climate and sustainable development)」を紹介した。
本ネットワークの声明の中核的主張は、カンクン合意の2℃目標へ向けた政策転換が世界的・歴史的大転換を意味すること、転換のためには節エネと非化石エネルギーへ変わるエネルギーシステムや70%以上の人口が集中するであろう都市、そして途上国の低炭素発展がカギを握るとしたうえで、そうした方向へ導くための政策として、将来への投資推進のための「炭素価格付け」を共通政策とするべきこと、途上国協力ファイナンスに関してこれまでの「共通だが差異ある責任」での分担押し付け合い論議を脱皮し、具体的政策実施段階での責任分担に進むべきこと、さらには低炭素社会転換に必要な巨大な資金投入を閉塞感のある世界経済浮揚へのテコにすることを提案している。各国政策に実際に強く関与する研究者・研究機関の連携による「低炭素社会へ転換」に向けた前向きの統合的研究にもとづく本声明は、ノーベル賞受賞者や閣僚経験者、IPCCの主要研究者など38か国200人以上の署名による賛同を得てフランス政府に提出されたと述べた。

 

Jean-Charles Hourcadeによれば、南北が対立しているようでは、変化に資金をつけていくことには問題がある。実際の活動が十分なコベネフィットを提供しえないかぎり、GHG削減の実質的なアクションは期待できない。現在の問題は十分な世界の貯蓄を如何に持続可能な開発や気候変動行動に振り向けていくかということである。われわれは価格が開発レベルに見合うといった価格メカニズムを必要とする。また、投資家のためにリスクを担保することも必要である。1トンあたり50ユーロというCO2の価格は、インドのセメントの価格の2倍であり、これは可能ではない。だが、もし50ユーロが安全メカニズムに埋め込まれるのであれば、それは可能である。

 

P.R. Shuklaによれば、気候の構造を変えるためには、われわれは気候問題に焦点をあてるというよりも、次のような課題について焦点をあて、問題解決をはかっていくべきである。つまり、持続可能性、コベネフィット、イノベーションの機会、等である。インドのINDCにおいては、INDCのトレンドと2℃目標の間にはギャップがある。ただ、INDC目標のみを達成しようとするためには、インドはすでにたくさんの技術投資が必要である。これを追求するために、われわれはコベネフィットなどの炭素の社会的な価値を強調すべきである。

 

Jim Skeaによれば、企業の嗜好からすれば、炭素価格が最初で、次にETSシステム、そして最後に税制の順であろう。なぜなら企業は価格を安定した状態で保つために政府を信用していないからである。ただ、どんなことであれ、企業は炭素価格付けが将来どのように設定されるかという価格シグナルを必要としている。

 

Teresa Riberaによれば、GHG目標ギャップを埋める、欠けているリンクは財政的側面である。最初は政策的な誘導が必要である。UNFCCCには財政的な動きを支援すべく、こうしたアドヴァイスを提供していく役目がある。気候行動は発展の主流に位置づけられるべきであり、極端な行動とみなされるべきではない。気候行動と発展はリンクされる必要がある。気候行動はSDGsを通じて取り扱われるべきである。

 

ブラジル環境省のEverton Luceroは、「積極的な炭素価格と単なる炭素価格」について発表した。
炭素市場は割り当てのもとで取引をするためのもっとも効率的な方法に見え、これはかねてより目標を設定されている。
炭素税や化石燃料への補助金の縮小は国内対策である。炭素削減の社会的また経済的な価値の認識、緩和行動は、これは最近の動きである。経済から差し引かれる炭素には価値がある。ブラジルはこうした認識を支持する。いまやわれわれはこれを財政的なトラックへ入れ込むべきである。UNFCCCはこうした動きに政策的な支援を与えることができる唯一の機関である。あまりにも長い間、どの国がどれだけ他国にあたえるかといったことが議論されてきた。これはもう終わりにすべきである。なぜなら国には借金があるからである。財政資源はどこにでもある。国はそのかわりに、投資の保証を支援するために資金を使うべきである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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