MEETING

開催終了 19-20 Dec 2024

LCS-RNet 第15回年次会合 – 地球温暖化を1.5度未満に抑えるために、いかに行動を加速できるか?

  • 日時:
    Day1:2024年12月19日(木)18:00- 21:15(日本時間)(9:00-12:15 (GMT), 10:00-13:15(CET))
    Day2:2024年12月20日(金)18:00- 21:00(日本時間)(9:00-12:00 (GMT), 10:00-13:00(CET))
  • 会場:オンライン
  • 共催:LCS-RNet、公益財団法人地球環境戦略研究機関
  • 言語:英語(同時通訳なし)

2024年12月19日~20日、気候中立社会実現のための戦略研究ネットワーク(LCS-RNet)は、15回目の年次会合をオンラインで実施します。今回の年次会合は、「地球温暖化を1.5度未満に抑えるために、いかに行動を加速できるか?」をメインテーマに、2つの基調講演と3つのテーマ別セッション、パネルディスカッションを実施しました。

初日の基調講演では、ジム・スキー気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長による講演と、若手研究者を含む参加者との質疑応答を行いました。また、2日目の基調講演では、気候変動による極端な気温上昇がパリに与える影響、また、環境、社会、インフラのすべてにおいて適応が必要であるとするレポート「気温50度のパリ: 熱波への適応」を題材に、レポートの紹介と質疑を行いました。

また、テーマ別セッションでは、「産業の脱炭素化」、「気候レジリエントな戦略における農業と森林の役割」、「都市が気候レジリエントな形で発展していくにはどのような仕組みが必要なのか」を取り上げ、パネルディスカッションにおいて「地域の政策と行動の統合」をテーマに議論を深めました。

LCS-RNetは、2008年のG8環境大臣会合での日本提案から発足した、各国の気候政策に密接に関与する研究者・研究機関のネットワークです(2021年、設立当時の名称である「低炭素社会国際研究ネットワーク」から改名しました)。

ネットワークでは、日・独・仏・伊・英5カ国の研究機関が中心となり、研究成果の共有・発信などを通じ、国際政策プロセスに貢献し、各国の国内政策プロセスへフィードバックを行うとともに、さまざまな主体による気候中立社会の実現に向けた取り組みを支援してきました。

今回の年次会合は、それぞれのテーマについて、登壇者及び参加者を交えた意見交換を行い、今後の共同研究実施や論文の共著につなげていくことのみならず、それぞれが実施している取り組みについて相互に学びあい、それぞれの実装に活かしていくことを目的としています。

年次会合にはどなたもご参加いただけますが、ネットワークとして、次世代の研究者を育てていきたいと考えており、特に若手研究者のご参加を歓迎しています。

Day 1:2024年12月19日(木)

9:00~12:15(GMT)/ 10:00~13:15(CET)/ 18:00~21:15(JST)

9:00-9:15 (GMT)
10:00-10:15 (CET)
18:00-18:15 (JST)
開会挨拶 羽井佐 幸宏(環境省地球環境局総務課気候変動科学・適応室長)  
甲斐沼 美紀子(LCS-RNet事務局長 / IGES)  
9:15-9:55 (GMT)
10:15-10:55 (CET)
18:15-18:55 (JST)
基調講演 -地球温暖化を1.5度未満に抑えるために、いかに行動を加速できるか?
スピーカー ジム・スキー(IPCC議長) PDF (1.6MB)
議長 森田 香菜子(慶應義塾大学)  
10:05-11:05 (GMT)
11:05-12:05 (CET)
19:05-20:05 (JST)
産業の脱炭素化

産業部門は、世界全体の温室効果ガス排出量の40%以上、また世界全体の資源使用の大半を占めています。これらは、鉄鋼、セメント、石油化学、ガラス、製紙などの少数の重工業に集中しており、これらの産業では通常、(化石)天然資源を材料に変換しています。これら産業は、脱炭素化(場合によっては脱化石化)が困難な「脱炭素化困難」セクターとされています。というのも、脱炭素化(場合によっては脱化石化)には、大量のグリーン・エネルギーを必要とする、まだ大規模に実証されていない新たなグリーン技術への転換が求められ、またこうしてできた製品は、世界で通常取引されている商品の代替として、より高い金額を支払ってまで積極的に取引される市場が存在しないからです。

こうした大きな課題にもかかわらず、最近では、チリやドイツが主導する気候クラブなど、国際的に重工業の脱炭素化を推進する政治的な機運が高まっています。各国政府は、特に太陽光発電、バッテリー、電気自動車などのグリーン技術周辺の産業開発を、成長と国際競争の戦略的重点分野としています。また、米国インフレ抑制法(IRA)、欧州のネットゼロ産業法(NZIA)、中国の積極的な産業政策など、強力な政策を打ち出しています。加えて、研究により、重工業の脱炭素化は産業構造の変化、特に工場の移転などを引き起こす可能性があることが示されています。このような動向は、グローバル・サウスにおける脱炭素化と再生可能エネルギーが豊富な地域の発展の機会をもたらす一方、既存の工業地域においては公正な移行への課題ともなります。

本セッションでは、産業の脱炭素化についての科学の現状を示し、産業の脱炭素化を加速させることができるのか、さらには産業の脱炭素化が世界の脱炭素化のけん引役になりうるのかを考えます。

議長 シュテファン・レヒテンベーマー(独・カッセル大学)  
スピーカー フランク・ペーター(アゴラ・インダストリー) PDF (2.4MB)
イサドラ・ワン(アゴラチャイナ) PDF (3.5MB)
イモーゲン・ラトル(英国・リーズ大学/UKERC) PDF (1.2MB)
パネリスト ラフル・パンデイ(インドIGSA(統合システム分析)研究所)  
田村 堅太郎(IGES)  
11:15-12:15 (GMT)
12:15-13:15 (CET)
20:15-21:15 (JST)
気候レジリエントな戦略における農業と森林の役割

国連の推計によれば、2022年に80億人を超える見込み とされていた世界人口はそれ以降も確実かつ急速に増加しています。その結果、食料需要が増加し、(水や土壌などの)天然資源の乱獲、森林破壊、集約的農業や畜産による温室効果ガスの排出が増加しています。

「農業、林業、その他の土地利用」(AFOLU)は、温室効果ガス排出の原因となるだけでなく、炭素吸収源として機能する可能性もあるため、気候科学において重要な役割を担っています。実際、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書である第6次評価報告書(AR6)によると、AFOLU部門は温室効果ガス排出量の約22%を占めていますが、同時に(主に農地土壌への炭素隔離、森林再生、植林、森林・土壌管理の改善を通じて)2030年までに最も大幅な排出削減の可能性を秘めています。

この二面性は、気候変動を緩和する重要な要因として、都市林を含む農林業に関する研究を支援することの重要性と、効果的で持続可能なAFOLU戦略を策定すべく科学と政策の緊密な連携を促進することの重要性を浮き彫りにしています。本セッションでは、こうした観点から、気候変動緩和における農林業の役割、そして具体的な取り組みや課題について議論を行います。

共同議長 セルジオ・ラ・モッタ(伊・新技術・エネルギー環境庁:ENEA)  
アレッサンドラ・デ・マルコ(ENEA)  
スピーカー エレナ・パオレッティ(IRET-CNR) PDF (4.8MB)
田中 勇伍(IGES) PDF (3.0MB)
パネリスト 長谷川 知子(立命館大学)  
ロベルト・ファリーナ(ENEA)  

 

Day 2:2024年12月20日(金)

9:00~12:00(GMT)/ 10:00~13:00(CET)/ 18:00~21:00(JST)

9:00-9:40 (GMT)
10:00-10:40 (CET)
18:00-18:40 (JST)
基調講演 – 気温50度のパリ:熱波への適応
スピーカー アレクサンドル・フロランタン(パリ「50度」レポート) PDF (1.8MB)
議長 ヴィディー・アバシア(インド経営大学アーメダバード校)  
9:50-10:50 (GMT)
10:50-11:50 (CET)
18:50-19:50 (JST)
都市が気候レジリエントな形で発展していくにはどのような仕組みが必要なのか

都市化が進み、世界人口の60%が都市部に集中している現在、都市は深刻化する気候危機の最前線にあります。ヒートアイランド、大気汚染、洪水などにより、気候変動の影響を特に受けています。先進国であれ、気候非常事態に直面する多くの貧しい国であれ、都市化により気候変動の混乱の多くが引き起こされています。都市は、増大する気候変動の影響に対処する上で重要なアクターとなっており、緩和策と並行して適応計画・戦略を策定し、国の気候戦略を補完(またはギャップを埋める)しています。しかし、都市の適応計画・戦略はそれぞれ異なる状況下で実施されており、特に各都市の資源の状況(財政、人的資源、規制、予測)に依存しています。こうした背景から、先進国の都市と後発開発途上国の都市との間で、適応に関する実施格差の拡大が懸念されています。

本セッションの目的は、マルチスケールの気候ガバナンスと地域コミュニティの役割が増大していく中で、気候変動に適応すべく都市や都市部が活用できる多様な手段を分析することです。具体的には、成功した政策と現状の課題(限界)について考察し、これらの政策がもたらす不適応と公平性の副作用の潜在的なリスクについて議論します。また、都市や都市部における適応政策や対策が、健康、雇用、生物多様性(自然を基盤とした解決策)といった他の重要な問題との必要な関連性に取り組む、統合されたレジリエントな遷移パスの一部(若しくは複数)となりうるかについても検討します。

議長 クリストフ・カッセン(仏・環境・開発国際センター:CIRED)  
スピーカー エリック・ザスマン(IGES) PDF (1.2MB)
ダイアナ・レキエン(オランダ・トゥエンテ大学) PDF (2.9MB)
エマ・ラムゼイ(シンガポール・南洋理工大学)  
ヴァンサン・ヴィギー(CIRED)  
11:00-12:00 (GMT)
12:00-13:00 (CET)
20:00-21:00 (JST)
パネルディスカッション:地域の政策と行動の統合
スピーカー フランク・ルコック(CIRED)  
シュテファン・レヒテンベーマー(カッセル大学)  
アレッサンドラ・デ・マルコ(ENEA)  
増井 利彦(国立環境研究所)  
甲斐沼 美紀子(IGES)  
議長 ジョヤシュリー・ロイ(アジア工科大学:AIT)  
一覧へ戻る

NEXT CONTENT